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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(新れ)499号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人大橋茹、同斎藤寿の上告趣意について。

論旨は判例違反の違法があると主張するのであるが、かかる事由を理由として上告の申立をした場合には、刑訴法第四〇七條刑訴規則第二五三條により上告趣意書に刑訴法第四〇五條第二号又は第三号所定の判例を具体的に示さなければならないのである。然るに論旨(イ)は、原判決が本件紺織木綿はその巾が五吋を超える織物であることは裁判上顕著であるとして特に証拠によってこれを認めた理由を説示しなかったことは従来の判例に反すると主張するだけで、何ら右判例を具体的に示していない。又論旨(ロ)前段は、第一審判決が所論の告示を法令の適用の部に記載しなかったことは未だ法令の適用に誤があり其の誤が判決に影響を及ぼすものとは云い得ないと判示した原判決は昭和十八年(わ)第七七八号事件につき、同一九年二月二六日東京高等裁判所が上告審として言渡した判例に違反すると主張するのであるが、右援用の判決は東京高等裁判所がなした判決ではなく、裁判所構成法による東京控訴院が同法戦時特例第五條により上告審として為した判決であって従って刑訴法第四〇五條第二号第三号に掲記する判例にあたらない。何となれば同條第三号には「最高裁判所の判例でない場合に大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例……と相反する判断をしたとき」と規定し、特に大審院の判例を掲げているに拘らず上告裁判所たる控訴院の判例をここに掲げていないからである(裁判所法施行法第二條に基く同法施行令第一條第二條は経過法的規定であって、刑訴法第四〇五條第三号の適用に関し、大審院及び各控訴院の為した判決を上告審たる東京高等裁判所及び当該控訴院の所在地を管轄する高等裁判所の判例と看做す趣旨でないことは云うまでもない)。次に論旨(ロ)後段も何ら判例を具体的に示していない。されば以上(の論旨)はいづれも刑訴法第四〇七條刑訴規則第二五三條に違反するものと云うべく上告趣意書末尾の所論も明かに刑訴法四〇五條所定の事実に該当しない。而して本件は同法四一一條を適用すべきものとも認められない。

よって刑訴法第四一四條第三八六條第一項第二号第三号に従い主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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